クリスマス・アルバムは名のあるアーティストたちは必ずリリースしていると言ってもいいだろう。フランク・シナトラ、ナット・
キング・コール、エラ・フィッツジェラルドなどのスタンダード歌手。、ベンチャーズやビーチ・ボーイズなどのグループ。フィル・
スペクターは自らのプロデュースでコンピレーションを発表しているほど。
前作「FOR THE GOOD TIMES」 で大人の歌手としての力量を見せつけた加山雄三がクリスマス・スタンダードを集めたアルバムを
リリースしたのは当然のこと。今回もアダルト・サイドとファミリー・サイドとコンセプトを分けての収録。
まずアダルト・サイドの1曲目はクリスマス・スタンダードの極みともいうべきアーヴィング・バーリンの名曲「WHITE CHRIS
TMAS」。もともとは映画「スキング・ホテル」(1942年)ビング・クロスビーが唄ったものだが、第二次大戦中に戦地に赴いた米軍
兵士の郷愁を誘って大ヒット。映画から生まれた曲としては最高のヒット・ナンバーと言える。加山ヴァージョンの「WHITE CHRIS
TMAS」はビング・クロスビーの正調ではなく、どちらかというとフランク・シナトラやベリー・コモのような堂々たる風格をもって
唄い上げる感じだ。特に2コーラス目がいい、A②「O HOLY NIGHT」は通常アルバムなどでは讃美歌と架かれているが、19世紀に
フランスのアドルフ・アダムという人が作曲し、1858年に英国人ジョン・サリヴァン・ドワイトが、英語詩をつけて完成したという。
ほかにもA⑤「O LITTLE TOWN OF BETHLEHEM」などの讃美歌をスタンダード歌手の風格で唄い上げる。
ファミリー・サイドはぐっと楽しく、スインギーなB①「JINGLE BELS」、子供たちのコーラスも楽しいB②「赤鼻のトナカイ」、
B④「諸人こぞりて」などのお馴染みのクリスマス・ソングに混じって、加山雄三オリジナルのクリスマス・ソングが2曲収録されて
いる。B③「ぼくのクリスマス」は66年にシングル・リリースしている弾厚作作曲・岩谷時子作詞・森岡賢一郎編曲の黄金トリオの
作品を再録音。オリジナルはコミック・ソングのようなアレンジだったが、このヴァージョンは子供たちのコーラスと唄う正調「ぼく
のクリスマス」。そして、ファンにとって何よりのプレゼントだったのがB⑤「クリスマス・イヴ」、クリスチャンの加山ならではの
しっとりしたクリスマス賛歌であり、弾厚作らしいラヴ・ソングとなっている。聖夜にふさわしいバラエティに富んだクリスマス・
アルバムである。 |