仕返しのチャンスを狙っていた

うちの親父というのは天下の二枚目で、60年に
一人しか出ないって、世間がチヤホヤしたじゃ
ないですか!?チヤホヤされるとダメですね。
うちの親父は大根役者で有名で。恥ずかしくて
見てられないですよ、ほんとに。

阿川)じゃ、加山さんは(チヤホヤ)されな
   かったんですか?

されないですよ。比較されて、やっぱり親父の
方がいい男だなと。

そこらじゅうで言ってるのを聞きながら、男は顔じゃねえや馬鹿野郎、男は心だ、この野郎
なんてなことをずっと思って、レジスタンスの塊で。僕は反発したんです。
ぶん殴られたんですよ。親父がしばらく居なかったんです。学校から帰って、今日お父さん
帰ってくるよって。すげえ嬉しくてね、お帰りなさいって言ったら、バァーンって殴られて
ね、ぶっ飛んじゃったんですよ。
「なぜ殴ったか、わかるか!お前はお父さんの許可なく高いセメントを1袋使っただろ」、
セメント1袋使って殴られるかねと思ったんです。10袋も積んであるんだから、一つぐらい
いいじゃねえかっていう気持ちが強かった。

阿川)何のためにセメントを?

釣ってきた魚をね、入れようと思って池を作ろうと思って。あの辺は砂地だもんだから。
いくら掘っても砂地だから吸っちゃう。セメントで固めなくちゃって。
それで家出、したんです。

阿川)家出?

家出したって行くとこ無いですよ。しょうがないから海岸行って、松林の陰でずっと
「何も殴ることはないだろう」って、そればっかり頭にあって。夜暗くなってきたら、遠く
の方からお袋の声がして
「あんた、その辺に居るんだろ?返事をしなよ。わかってんだよ。親父が殴ったのは悪い
かもしれない、殴られたあんたもやったことは悪いかもしれない。でもね、謝っちゃいな。
どんなに悔しかろうが、あんたが悪くなかろうが、謝ることが出来たらあんたの勝ちだよ。」ってお袋が言ったんだよね。で、謝った。
「お父さん、ごめんなさい」って言ったら、
「わかればいいんだよ」なんちゃってね。偉そうにこの野郎って。

なんとか仕返しをしようと考えて。うちの親父は
ボクシングを練習してて、家に道具があったの。
僕も実際に練習してて。

阿川)密かに鍛えてた?

背が親父より大きくなってから、高校時代に
「親父スパーリングやんない?」
「おう、いいよ」
ここぞとばかり構えて、遊んでやってたら
「ちゃんと殴れよ、受けてやるから」

「そうか、でも当たっちゃったら悪いもん」って言いながら、ダァ〜ってやったら、
 ガ〜ンって。そのままダウンして鼻が血が出て唇がはれあがっちゃって。手をつかんで
「お父さん、大丈夫?ごめんなあ」とか言いながら。内心やったよ!って。はっはっは。

 

ここまでを動画でお楽しみください。期間限定で掲載します。

(動画掲載終了しました)

 
 

 

2016年08月11日新設