俳優を目指した意外な理由

阿川)映画に出ることになったのは何がきっか
   けだったんですか?

学校卒業する半年前の夏休み。僕は普通の会社
に就職するつもりだったんですよ。サラリーマ
ンになろうと思って。

阿川)サラリーマンになるつもりだった?

ほんとはね、船を設計する造船技師になりた
かったの。

ところが船乗りになるためには16歳から水産高校に行って、実際に試験航海とかをやらない
とダメだと。結局、卒業する時はサラリーマンになるしかしょうがないなと思って、就職の
資料を。アサヒビールと三菱商事といいとこばっか。それを置いてあった。そしたら夏休み
に友だちのバンド仲間が遊びに来てて。

阿川)もうバンド組んでたんですか?

大学1年ぐらいからやってましたからね。それを見て
「お前、何だこれ?」って言うから。
「就職するんだよ」
「お前サラリーマンになるつもりかよ」って言うから。
「一応な、そうだよ」って言ったら。
「お前はな、サラリーマンという柄じゃねえよ。お前学生時代にやったのは音楽とスポーツ
 しかねえじゃないか。成績だってあまり良くないじゃないか」

阿川)良くなかったんですか?

良くないです、全然!遊んでばっかりいたから。
「お前な、家に資産はないかわりに暖簾があんだろ?その暖簾使わない手はねえよ。」

阿川)お父さんの暖簾!?

「この世界に入って一旗揚げて金儲けすりゃ、お前が好きな船、自分で金儲けして作れば
 いいじゃねえか」。その一言ですね。それも一つあるかな!?と。これ、いいなって。

で、心に決めてね、家の親父にね、
「親父、俺、俳優になろうと思うんだけど」って。

阿川)そんな軽い言い方だったんですか?

うん。
「お父さん絶対反対だよ。」
「なんでよ?」

「これほどプライバシーの無い仕事はないんだ。
お前はね、プライバシーがちゃんと守れる仕事を、普通の仕事をやった方がいいよ。
お父さんはそう思うから反対」

そうかもしれないけど、やっぱ金儲けしたい。もう一回言ったら
「お父さんに何回言っても、お父さんの意思は変わらないよ」、3回目に
「俺やる気があるんだよね、やっぱり」って言ったらさ。
「お前本気か?」って言うから。
「本気でなきゃ言わないよ」
「じゃあな自分で蒔いた種は、自分で刈り取るつもりでやら!わかったか!?」
「はい、わかりました。で、どこ行けばいいんだろね?」

どこへ行けばいいかわからないから。親父がパッと動いて。東宝の方からお誘いがあったと
いうことで藤本プロデューサーに話をしたら一発でどうぞってなって。
待ってましたとばかりに、記者さんをいっぱい集めて記者会見やって、その時に
「加山雄三、加賀百万石の「加」、富士山の「山」、英雄の「雄」。小林一三の「三」、
これで「加山雄三」です」って、説明したらこれが受けちゃって。あっという間に新聞なん
かに出て。

阿川)そういう意味で付けられたんですか?

いや、そうじゃないです。
これは、おばあちゃンがお金を払って縁起のいい名前をもらってきた。

今回はここまでです。後半は8月25日に掲載の予定です。

 

ここまでを動画でお楽しみください。期間限定で掲載します。

(動画掲載終了しました)

 
 
2003年に阿川さんと対談された記事を掲載しました。下からどうぞ!
 阿川佐和子の この人に会いたい

 

2016年08月11日新設