トークショー 阿川佐和子さん

宮本)皆さんようこそお越しいただきました。加山雄三さん専属追っかけ司会者の宮本隆治で
   ございます。加山さんは今年画歴20年。59歳からお始めになったわけですねえ。年齢は
   関係ない。何をするにも年齢は関係ないんだとおっしゃっておられます。来年は傘寿、
   傘の寿と書くんですけども、私たちにとっては傘ではなくまるで太陽の傘(さん)。
   そういう感じがします。一方の阿川さん、ずっと芸能界の深海魚と言われておりました。
   浮いた話が無かったわけです。それが最近ちょっと浮いたような話がありますねえ。
   でも素晴らしい女性でございます。私、(阿川さんの)年齢は知っています。あえて
   申し上げません。12月1日に、んじゅう三歳になりました。でも永遠の少女でござい
   ます。お二人は慶応義塾の先輩後輩ということがありますけれども、どういうお話が

    生まれるのか。それでは、お呼びしましょう。お二人どうぞ!

大変長らくお待たせいたしました。もう少々お待ちください。

宮本)どうしたんですか?

しばらくしてお二人登場

阿川)うわっ、すごい!

どうしたんですか、このカメラは?

阿川)私、こっち!

宮本)きょうはゲストなんですから。

阿川)(こっちじゃないと)落ち着かないんです。

貴方何かレコード出したろ?レコードじゃないな、CDだ。

宮本)ありゃ!?きょうはその話じゃなくて先輩の絵の話ですので・・・。

いいから、いいから。デュエットで女の子と歌ってるんだよな。

宮本)身の程知らずで・・・。お二人の話ですからきょうは、座ってください。
   それではどうぞよろしくお願いしま〜す。30分ほどお願いします。

阿川)30分ほど・・・。

いきなり時計見るなよ。待ってる人が居るのか?

阿川)はい、はい、はい。

まぁ、おめでとうございます。

阿川)えっ!?前に私の番組に出ていただいた時に、「とにかく今忙しいんで、絵を描く暇が
   ないんだ。早く帰りたいんだよ」って。

ほんとうにそうで、昨日の夜の10時まで描いてたんだよ。

阿川)えっ、そんなギリギリなんですか?

一番最後に描いたやつが、もう売れたって言うから、凄いと思って。
このあいだのたった15分の番組でしょ?あれっ。

阿川)違いますよ、30分ですよ。

2時間半ぐらい話したよ。なんだか知らないけど。話が上手いからね。どんどん進んでいっ
ちゃって。

阿川)お父様の悪口とかいろいろ。

はっはっは。きょうは絵だな。

 
小さい頃から
 

阿川)ちっちゃい頃から絵を描くのは好きだったって。

のけ者にされて。

阿川)加山さんがいじめられっ子っていうイメージないですね。

いじめられっ子は言い過ぎですけども、当時、継ぎのあたってないズボンを履いてただけで、
のけ者にされたんだな。

阿川)金持ちだったから?

みんな野球をやってるのに僕だけ仲間外れにされちゃって、しょうがないから教室でノートの
裏に鉛筆で絵を描き始めた。毎日そうやって描いてるうちに絵が面白くなってすぐそばに居る
やつの顔を描いたら、そっくりに描けたんだな。
それを見た他の子が「似てるじゃないか」って、「俺も描いてくれよ」って。行列ができた。

阿川)似顔絵師になっちゃった。

それがちゃんと展示されたんだ。先生が認めてくれて。それが嬉しかった。褒められると豚も
木に登る。木に登っちゃったんだよ、俺。小学校2年生ぐらいに描いた絵が今も残ってるけど。

阿川)残ってるんですか?

残ってますよ。それを見ると絵心というのがあるなと。自分で言うのも変ですけど。
あと、遠近法?それもちゃんとしてたよね。

阿川)誰に習うでもなく!?

まったく無い。習ったのはピアノだけですけど。先生の言う通りにしない、だから全然上手く
ならない。

阿川)それから長い人生であったけれども、俳優さんになって黒澤明さんに気に入られて。
   その間は絵はどうしてたんですか?

自分で船の設計をしてたんですけども、その設計したやつを走ってる絵にしたくなるんだよ。
そういうのをやってるうちにデッサン力が身に付いたんだろうと。そういう訓練みたいなもの
は自然にやってた。

阿川)趣味の域だったんですか?

 

そうですね。教授とは長いんですか?

阿川)何の話?

慶応の教授なんでしょ?

阿川)前ね。今はもう・・・。

長いんですか?

阿川)長い、長〜い。長い絵とのつき合いを・・・。

いいじゃないですかねえ。絆ですね。絆っていう字は糸へんに半分?

阿川)なんで糸へんに半分なんですか?

一つの糸を半分ずつ持ってればいいいんですよ。それがきずなということですよ。

阿川)そういうことですか?

そうなんじゃないの、知らないけど。そうだよね。1本の糸で結ばれるんだよ、赤い糸でね。

 
どうして個展を
 

阿川)それでどうして個展をすることになったんですか?

59歳の時に、お正月に富士山の夢を見たんですよ。生涯1回も見たことがないのに。
見たことある?

阿川)そういわれてみればそうだ。私は海の夢が多いんです。

俺は海の夢は見たことないな。

阿川)海があれほど好きなのに?

その富士山の夢に、武田鉄っちゃんと彼のお母さん、それと彼の付き人と俺と4人で歩いて
いるんだよね。

阿川)武田さんと仲いいんですか?

誕生日が同じなの。4月11日しかも同じ丑年。一回り下だけど。だから何か縁があるなという
ことは、自分の中にあったんだと思うけど。

阿川)似てるとこありますかね?

せっかちなとこかもしれない。それを見てた時に、富士山のてっぺん、左の方に家が建ってる。
「あれが僕の別荘なんですよ、隣に建ててください」って。
「おれはこっちの方がいいよ」って。歩いてるうちに目が覚めた。考えてみたら元旦なわけよ。
カミさんに
「おい、起きろ。大変だよ、おい!初夢、富士山だよ」
「あっ、そう。じゃぁ、何かいいことあるかしら」って、そのまんま寝てるの。
その時に、ここの美術部の人がウチの事務所に来た時に飾ってあった絵を見て、
「これ誰が描いたんですか?」と。加山雄三が描いたって言ったら
「個展ができますね」って、言ったんだそうですよ。それで10月頃に個展やりませんか?って
なって。前からやってみたいとは思ったけど・・・。

阿川)それまではやったことなかったんですか?

ないですよ、個展なんて。
「何点描けばいいんですか?」って言ったら、
「最低60点です」って。油絵そんなに描けないかもしれないよな。
「油絵、半分の水彩画半分でもいいですから」って。
「わかりました、いつまでですか?」
「10月です」って。

「え〜っ!?10か月足らずだよ。」それでも始めました。最終的に88点描きました。
油絵が43点、水彩画が45点。

阿川)本業が忙しいのに。

いやいや、忙しいのは忙しいけど、好きな事というのは、時間を作るんですよ。
貴女、忙しくたって好きな人に会いに行くでしょ?それと同じだと思うんだよな。

阿川)うん、うん、う〜ん。

それでやる気を起こしてやって、その中に変な絵が
1枚あったんです。「裁きを待つ男たち」っていう
のが。夢の中で朝見たんだけど、ロウソクを見ながら
裁きを待ってるんだ。夢でパッと目が覚めたら、それ
を枕元にあった紙に描いたんだ。それをちゃんと
スケッチにしてそれも飾ったんですね。嫌な絵なんだよ。売れないなと思ってた。

画家の方が買ってくださった。その方がきょうお見え
になってくれたの。「まだ持ってますよ」って。
こんな嬉しいことはないね

しかも一日の内に全部売れちゃって、それが最後の絵
だった。
一番最初に描いた油絵が、「ミレーのアトリエ」なん
だね。JALの機内紙を開いたところにあった、建物
だから描きやすいかもしれないって。

描き始めたきっかけは、ウチの子どもの夏休みの宿題
で、お父さんも参加してくださいというのがあって、
誰かが油絵って言ったんだ。風呂場でブルーシートと
新聞紙を敷いて全員で描いた。
斉藤さんという、道具を揃えてくれた人が居て。

阿川)4人プラス加山さん、5人で1枚の絵を?

1枚じゃないよ。それぞれだよ。それで一番最初に
描いたのがミレーの「アトリエ」。斉藤さんがその
絵を見て、
「すごいね、ちゃんとデッサンが出来てるよ」って。
褒められて。次から次へと描いていった。

阿川)絵の題材は多岐にわたってらっしゃるでしょ?

題材は、例えばパワースポットの樹はハワイだよ。
パワースポットと言われてるところで写真を撮った。
それからノースショアへ行って写真を撮ったり。

 

阿川)自分が描いてみたいなと思ったら写真を撮って家に戻ってそれを見ながら描くんですか?

フランスのニースやギリシャは絵になるの。

 
新しい挑戦
 

阿川)今回の個展の中で新しい挑戦は?

子供をけっこうたくさん描いた。子どもは難しいからサイズやベクトル何をしようとしている
か、体重のかけかたとか正確に描くのは難しいんだよね。心まで描かなきゃいけないんだね。
よ〜く見てくださいよ。背中を見て、これは砂をいじってるとかね。そういうのが分かるはず
なんだよね。子どもの場合はバラエティーに富んでいるんだな。「フローレンスの思い出」と
いうのは、2枚目なんだけど。私のおばさんがお花とかテーブルのコーディネーションをやる
人だったのね。これが雑誌に載ったのね。白いチューリップを描いて、おばさんはフローレス
と言う名前なんだよ。

阿川)フランスのフローレンスという場所の話かと思った。

ハーフで17歳ぐらいの時に、家に遊びに来て、綺麗な女の人でいきなりオルガン弾いた。
バイエルの74番。俺、絶対これ弾きたいと思って、教えて教えて教えてって1時間半ぐらいで
覚えた。そのおばさんが亡くなったので描いたら、それを見た人が同じのを描いてください
って言われたので、花の色をピンクに変えたの。

阿川)フローレンスさんの思い出だったんですね。

奥にあるハワイの絵は最近のハワイなんです。パドルボートをやってる人が描いてある。
これは10年前には無いんです。そういうところをチラっと見せている。

阿川)そういうところで楽しんまれるんですね。

人はすべて鏡なんだよね。真っすぐな鏡を大切にね。貴女にも俺が鏡として映っているんだ。
貴女が俺を評価してくれてる。

阿川)わかっちゃう?

ものすごい尊敬と。いい鏡だと思うんだけどね。

阿川)正直なんですもん、加山さん。

正直以外の事言えないんだよ。

 

阿川)あの話してくださいます?「しあわせだなあ」の歌。出来たいきさつを。

あれは森岡さんのアレンジがものすごくて。

阿川)本当は大学時代にバンドを組んでいたので、ロックをやりたかったのに、この顔じゃ
   誰も手放さないという事で、若大将でずっと。

英語でロックを書いてたんだけど、会社の藤本さんていう重役が英語の歌はダメだと。それで
お会いしたのが岩谷時子さん。学生時代に書いた「DEDICATED」、”捧げた”という意味。
これをお渡ししたら「恋は紅いバラ」になって、それを歌ったら25万枚も売れちゃったんだ。

阿川)それはどんな歌でしたっけ、出だしだけ?

♪アイラブユー イエスアイドゥー 愛して〜いるよと〜♪、そして今度は渡辺プロの渡辺晋
さんが「これと同じコード進行でいいからもう1曲書いてくれる?」って。

阿川)渡辺さんがおっしゃった?

そんなこと言われたってと思って、ずっと作らないでいたんだけど、明日締め切りと言う時に
ピアノの前に座って♪アイラブユー♪を♪タラララ〜♪って作ったの、1時間半ぐらいで。
それを渡して映画の撮影で関西に行っちゃったの。カラオケも詩も出来て毎日放送のスタジオ
でレコーディングすることになって、それで♪タラララ〜♪って流れてきたの。あんな簡単に
作った曲がこんなになっちゃった。

阿川)オーケストラの曲になって。

フルオーケストラですよ。詩を見てものすごいロマンチックじゃないかって。間奏になって
「幸せだなあ」って言ったら、これいきましょうってなって。それに「君といるときが一番
幸せなんだ」って・・・。
言った?

阿川)何が?

教授!?

阿川)あっ、うん、うん。

良かったねえ。

阿川)ありがとうございます。

文枝さんの新作落語が大好きで毎晩聴いてるの。「優しい言葉」っていう落語があって。
その落語に、
 最後には優しい言葉で話してやれよって。「幸せだなあ、君といる時が一番幸せなんだ」
 って。それじゃ加山雄三じゃない。
って入ってるの。この曲の歴史を感じるし、文枝さんまで言ってくれてるってすごいなと
思ったりさ。実数で350万枚売れて。

阿川)(鼻をこする)これは自分で考えたんですか?

違う違う。テレビでやったのがいいって。次の週もまたトップだから、やってくれって。
それが一つのポーズになっちゃって。結局それが大ヒットしてロックから離れた。

はい、お時間が来たようでございます。

宮本)この二人このまま続けますと、あと三日はかかると思いますから、このあたりで。

 

2017年01月12日新設