3月30日

干場)今日が最終乗船日ということで、どちらへ行かれたお話を聞かせていただけますか?

そうだなあ、割合近いところですが、上海。

干場)いつ頃のお話ですか?

そんなに昔じゃないけれど、もう5年は経つかな。上海は一番中国でも、ヨーロッパ風の建物が
あったり銀行がかなりあったりするんでね。いいもんだから何遍も行っちゃってね、食べ物が
美味しいんだね(笑)。

干場)はい、中華料理は美味しいですね。

美味しいんだよ、これがね。「中国一高い店」っていう名前の店があるんだよ。

干場)店の名前なんですか?

店の名前が「中国一高い店」っていう名前で。

干場)それは値段が高いんですか?

値段が高いんだろうなあって思うけど。日本の高いのとは全然違う、中国にしては高いんだと思う
んだ。でも我々からすると、日本で食べた方が高くつくなって思うからさ。だから障害にはなら
なかったねえ。それで美味しいんだよ。肩章付のボーイさんが立ってさ。こっちが貴賓になっ
ちゃったというかさ、お偉いさんになったようなさ、気分になれるところ。そこのフカヒレの
スープがすごく美味しくて、どうやってるのかとおもうと、かぼちゃを使って。”かぼちゃ!?
フカヒレスープにかぼちゃなんてもったいないな”って(笑)。僕は、かぼちゃで育ったような
もんでね、終戦後にさ。かぼちゃなんて嫌だと思ってたんだけど(笑)。ところがどっこい、
めちゃくちゃ美味しいの! びっくりした!こういう味になるんだ!?みたいなね。

干場)フカヒレのスープってフカヒレだけ入ってるんじゃないんですか?

こじゃないですよ。今はいろんなものが入っているの。ツバメの巣を入れたり、鳥の肉が
入ってたりとか、野菜がちょっと入ってるのもあるし、色々あるのよ。そこのは、フカヒレと
かぼちゃなんだな。ところが、そのかぼちゃの味が全くしない。それどころかものスゴく
美味しい。それこそ、その店に行って、そのスープ飲むためだけに上海行って、帰りに飛鳥IIが
いたので「俺が船長やるから、乗っけてくれよ」って、家族みんなで乗ったんですよ(笑)。
名誉船長やって八代港まで乗ってきましたよ(笑)。

干場)船長やるからって言ってですか?

僕は毎年、飛鳥IIの船長をやってるんですよ。今年もまた、7月から8月にあるんですよ。

干場)それは加山さんと一緒に乗れる?

そうです「若大将クルーズ」と言ってね、3日間くらい。

干場)最高ですね

本当の船長が
「どこ走りましょう?」って言うから
「じゃあ俺が決めるよ」って。海図にライン描いて。
「ここ何時ごろ通過ですか?」計算して、ノット数を計算するのが楽しくてさ。

干場)そこまで全部計算して!?

うねりがあるから、駿河湾の中に入ってグルグル周った方が良い。朝起きたと同時に富士山が
見える事を望みながら。

干場)景色も考えて?

そうそう、考えて。光進丸っていう歌があるじゃないですか。その歌に、「江ノ島三崎大島こえて
新島式根三宅島まで」っていう詩が出てくる。その通りに行ったりとかね。

干場)面白い!?

そういうクルージングを年に1回やってるから。

干場)ホント若大将スペシャルですね、それ

○光進丸

干場)クルーズで旅した思い出とかありますか?

横浜港からハワイまで行って、シーライフパークでイルカのショー見たりさ。それでサンフラン
シスコのゴールデンゲートのブリッジ下通ってね。それは昔の船だけどね。2万3000トンぐらい
のプレジデント・クリーブランド。今はもう無いですよ。なぜそれに乗ったか?結婚して子ども
が出来て、生まれる時にはアメリカで産みましょうと。そうするとアメリカの市民権が獲れる
からと。お腹に居る時は船が良いかなあと思ったら、早産になりそうになったのね。

干場)船の中でですか?

そうじゃなくて。3か月ぐらい早く産まれちゃったの。それで、どうするって事になったけど。
保育器に入ってるから触れないわけだ。それで船に乗って行っちゃおうぜって、行ったのが
サンフランシスコまで。ベイビーを病院に置いたまま。

干場)そうなんですね

それで少しは心をね、和ませるというかさ。だからだんだん元気になった。素晴らしい先生が
ついてるから大丈夫だって。お任せすれば良いよって。その先生の名前をそのままそっくり長男に
付けてるからね。「信宏」っていう名前。もう引退なさってるけどね。思い出のある航海として
は、その航海が一番思い出がある。

干場)思い出が残りますよね

ハワイに近づいた時にね、台風があの辺にあったんだ。ものスゴいうねりがあって、こんなデカい
船でもこんなに揺れるんだっていうくらい揺れてたんだけど、我々は船に酔わない体質なのね。

干場)なんでですか?

知らないよ。小さい時から船ばっか乗ってるからじゃないかと思うんだ。カミさんも全然船に
酔わない。結婚の直前に俺の船乗って。大時化だったの。出るのやめようと思ってたら。なんで
出ないの?って言うから。出て行った。ドスンドスンって波が当たって船が揺れてるんだ。様子
見てたら、さすがにね下に。居なくなったんだよ。

干場)奥様が?

船室へ入っていったから。ああ、こりゃダメだと思って。中々上がってこないから、下へ降りたら
なんてことはない、編み物やってるんだよ。こいつ馬鹿じゃないかと思ったね。

干場)強いんですね

ものスゴい揺れてるんだよ。上がってこないから心配するじゃないかって。濡れるから、ここで
編み物してるのって。何編んでるの?って。ヒ・ミ・ツとか言って。平気な顔してるんだよ。
それで結婚する気になったんだよ。全然、屁でもないんだな。酔わないなんて丈夫だなあと思った
ら、案の定、丈夫ですねえ。100歳越えるねえ、ありゃあ!?そういう思い出がありますよ。

干場)最後の質問をさせて頂きたいんですけど、旅とは、加山雄三さんの人生においてどんな
   インスピレーションを与えてくれるものなんでしょうか?

人生そのものが旅人だと思っています。

干場)人生そのもの!?

何かが起きる、凪もあれば、時化の時もある。人生そのものが人生航路、それは航海と全く同じだ。
旅はすなわち自分自身の生きてること、それが旅だと。これね、「旅人よ」なんだ。あの歌の通り。
そういう風に思ってます。だから旅、好きです。今度またハワイに行くんでね。その時は友だちが
一緒に行く。そうすると旧交も温められる。そして伴侶が常に一緒に居るじゃん。旅に出ると
ヤッパリ喜ぶからね。家の中で、年中料理作ったり、なんか家事やってるよりもレストラン行った
ら美味しいものが食べられるしさ。旅はするべきだし、旅というものによって自分の人生を照らし
合わせる事が出来るくらいいっぱい生きて来たと。82(歳)になるから。長い事生きてると人生
そのものが旅かなと思うくらい思っちゃうんだよね。特に船での旅は、本当にノンビリして。
アメリカまで行く時は一日一時間づつ縮まってくるんだよ。

干場)あっ、時差が!?

そう、減ってくの。毎日お昼の12時が一時間づつ早くなってくの。向こうに着いた時は、あちらの
時間になってるわけ。そういう経験というのも中々出来ないしね。船の旅も良いけど、飛行機で
パっと行って、目的地をハッキリして。そこの中でどういう行動をとるかという目的をキチッと
して。俺がオーストラリア行った時みたいにならないようにね。
ああなっちゃうとエライ事になるから。

干場)加山雄三さんに、旅は人生そのものって聞かされるとなんかそういう風に・・・

思える?良いねえ。

干場)ありがとうございました。

とんでもないです。

干場)スゴい楽しかったです

ありがとうございました。

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 3月30日

2019年03月24日新設