キヨサク)加山さんは、音楽に向き合う時と、絵を描く時とでは、向き合い
方は違うんですか?
絵はすごく時間をかけて描くわけだ。出来上がりを想像しながら描く
わけだよな。モチーフがあれば、見ながら。俺の場合は写実的な、写真
みたいな絵を描くのが好きなんだよね。一時、アブストラクト的な絵を
描いたんだけど、見た人から、まだ早いって言われて、一生懸命、写真
のような絵を描いた。
ニューヨークへ行った時にメトロポリタン美術館へ行った。ピカソと
ダリの若い頃の絵の展覧会があったんだよ。見たらピカソが写真のよう
な絵を描いてるんだ。だから、俺は言われた通り、アブストラクトは
描かずにいる。絵は見る方にしてみると、止まった状態だけど、一瞬に
して雰囲気を感じるわけだ。音楽は不思議なもんで、聴き始めたら終わ
りまでじっと聴いてて、終わった後は自分で想像する以外ない。その
違いがすごくあるんだね。音楽は短い時間に全部を聴いて、そのあと
咀嚼して思い出してということはあっても、絵のようにじっと想像を
かきたてるというのは無い。絵は壁に飾ってあったら、壁を埋めている
わけだ。音楽はそういうのは無いよね。流さないと聴こえないわけだ。
だけど音楽が素晴らしいのは、年代も無い、年齢も関係無い、時代も
関係ない、すべて自由、平等、世界共通。人間は喋る以前に音的に
メロディー的なもので意思の疎通を図ったのかなと。そこから始まっ
てるような気がするんだよな。ルーツを辿れば、原点にあるんだよな、
音楽は。絵は描かなきゃ、ダメなわけだ。似てるようでえらい違いが
あるんだよね。
キヨサク)音楽をやって煮詰まったら絵を描こう、みたいな感じですか?
全然、違うんだよね。完全セパレートなんだよ。音楽をやる時は、
ギターやウクレレを弾くうちにひとりでに音が出てきたら、っそれが
作曲になる。絵は最初から、描こうと思ったモチーフを見て描いて
いく。絵と音楽は切り離してる。
キヨサク)やっぱりスイッチが。違うもんなんですね。
同じような気持ちでやることは、同じだと思うんだよね。 |