「漂流48時間」    

気をつけるようになって、だんだん沖へ行って。
とうとう下田をまわって、下田港へ入ったときも、
”あ〜ここが下田なんだ、黒船も来たんだなあ、黒船もこんな気持ちで入っていったんだなあ”と思いながら入っていきました。おそらく黒船の時代には防波堤もなかったんだろうなあ。
下田富士、神子元島とか島がいっぱいあってね、なんか胸がドキドキしちゃって。

その下田から帰るときに大変なことがおきたんですよ。大島を過ぎてちょっと行ったところで突然エンジンが止まっちゃったんです。

何やっても動かない、時化てなかったからよかった。
エンジンをばらして、洗えばいいと思って、部品を一つずつ外して、
その内、日が暮れてきちゃった。

真っ暗になっちゃった。懐中電灯を持ってない。手作業もままならなくなって、いいや、このまま漂流しちゃえって。
ゆらゆら揺れながら、昔はね、今みたいに船がいないの!
漁船もなんにもいない。ほんとに船がいない。
風がなかったからよかったけど、
どこへ行くのかわからいのがちょっと心細いけど。
翌日も朝早くから目が覚めてるんだけど、どこが悪いんだろうか、ディストリビューターかな?
もう一回組み立てて、でも全然かからない。
しょうがないので、しばらくあきらめた。

それにしても腹は減るは。喉が渇くは、どうしたらいいんだろう?
結局、48時間漂流しましたよ。
助けに来てくれるような船はどこにもいない。しょうがないから、また分解して組み立てたところ、1個部品が余ってるんだねえ、これなんでだろう、一個余っちゃった。
どうしよう、まあいいや、ってエンジンかけたらかかっちゃった。
そんなエンジンってあるかね、それでもかかったからああよかったと思って、これで一気に帰えらないとどうにもならないと思って。

ようやく茅ヶ崎に帰って、浜に上げたんだけど。
家のお袋が
”あんた、どこに行ってたのよ、て言うから
”いやあ、海で漂流してた!”
”ああそう、バカだねえ”
それで終わりだから。今だったら大変でしょうが!捜索願やなんかで。

昔はのんきだね、俺が漂流してたって平気だもんねえ、家のお袋なんか。
そういう親だったから子供も逞しく育ったんだと思いますけど。

トークショーとは関係ないですが、加山さんをお楽しみください。

08年04月03日新設