トーク1

ユーミン)私が、今、会いたい人をお招きしてお届けするこの番組。これまでも、たくさんの大物に
     お越しいただきましたが、今夜はその中でも最上級なんじゃないかなぁ〜!?
     今夜のゲストは、ロックバンド、THE King ALL STARSとしても活躍中、永遠の若大将
     加山雄三さんで〜す

こんばんは。加山雄三でございます。

ユーミン)もう本物だあっていう。良く言われると思うんですけど。
     若大将の、きょうのファッションは、噂に違わずネイビーのジャケットですが、紺の
     ジャケット姿でよく居られるというふうに。

あのね、僕は着るものに、まったく無頓着でございます。

ユーミン)えっ、ほんとに!?

今までで、自分で買ったのは、シャツ2枚ぐらいしかありません。

ユーミン)ウソォ〜!?

嘘じゃございません。周りはみんな知ってます。衣装は全部衣装部が担当する。映画の場合も
テレビの場合も、コマーシャルの場合も、みんなコーディネーターが居て、それが買ってくれて。

ユーミン)プライベートは、どうですか?

プライベートも、ウチのカミさんは時々関与しますが、ほとんど、うふふふ。お仕着せみたく、
与えられたものを。

ユーミン)何で笑うんですか。

周りがそれでいいって言えば、それでいい。

ユーミン)ほんとに?

これを着てりゃ、どこへ行っても間違いはない、突然、どなたかに会っても間違いない。そう
いうジャケットというのは、これ1個しかなくて。

ユーミン)ほんとに意外でした

そう!?

ユーミン)あとね、私がビックリなのは、裸眼というか、私なんかは眼鏡を掛けちゃうんですけど。
     コンタクトでもなく。レーシックとか、されたんですか?

だいぶ前だけどね、日本でもやってない頃に。白内障ってみんなくるじゃないですか。それが
チャンスなんだそうですよ。その時に片っぽずつ。レンズを取り替えた。新品のレンズを入れた
わけね。それが、遠くも見える、近くも見える、っていう多焦点レンズというのは、まだ無かった
から。片っぽ近く、片っぽ遠くに。

ユーミン)ウソォ〜!?

ほんと。

ユーミン)何か、ご不自由はありませんか?

それが不思議なもんで。人間て、頭の中でちゃんと上手いこと、合成するんだってね。だから、
遠くを見る時は遠くの方にピントがなってて。近くを観る時は近くのレンズが働いて、頭の中で
近いものを理解すると。ほんとに信じられないくらい小っちゃな字だって全部読めるんだよね。
みんな不思議がるわけだ。見えるんですか?ああ、見えるんだよって。

ユーミン)じゃあ、それは良く聞かれるわけですね?

聞かれるけど、きょうみたいには、あんまりしつこく聞かれない。

ユーミン)加山さんの答え方とかが、すごい特徴あるなあって思っちゃうんですよ。視力について
     の話っていうよりも、そのお応えのされ方?なんかやっぱり理系なんだ、と。

えっ!?理屈ぽいか?

ユーミン)理屈っぽいって言われること、あります?

まあね!?そんなにない。

ユーミン)面と向かって言う、勇気のある人は居ないかもしれないけど

いやいや、そんなこと、ないよ。

ユーミン)私ね、良いですか、言って?

良いよ。

ユーミン)加山さんに初めてお会いしたのは、75年(1975年)ぐらいの話なんですよ。42、3年前。
     その頃、レコード会社がお正月にヒットパーティーというのをやってたんですね。
     東芝レコードのヒットパーティーでお会いしたのが初めてなんです。レコード会社の
     人が、荒井由実さんて、言って。加山さんが私の曲を知っててくださって

うふふふ。

ユーミン)これ、ほんとの話なの

覚えてるよ。

ユーミン)覚えてる!?

覚えてるよ!

ユーミン)あっら〜!?あのね、「中央フリーウェイ」という曲を

そう、そう。

ユーミン)え〜っえ!?加山さん、ほんとに?

そうだよ。なんで俺が・・・。

ユーミン)それは記憶力で覚えてらっしゃるの?

もちろんそうだけど、なんで俺がそんなこと言ったかね。結局、そういうことを言うような俺
だから作詞が出来ないんだって、思ったの。

ユーミン)あっ、ご自身で?

反省材料なの。

ユーミン)どういうふうに言ったか、というのをリスナーにつまびらかにしたいんだけど

俺が説明するの?あのね、「中央フリーウェイ」っていうのは、あれは有料道路だから、
「フリーウェイ」とは言わないよって、言ったんだよ。

ユーミン)私はねえ、そういうふうに言われるかなあ?って思って、構えていたら、そうじゃ
     なかったって記憶してるんですよ。

だけど、違うんだよ。頭の中ではそう思ったから、これをどう説明するか、考えてから言ってる
わけだ。

ユーミン)私が言われて痺れたのはね、「君ね、”調布基地を追い越し”っていう歌詞があるじゃ
     ないか、追い越すっていうのは移動している点が、移動している点を通過する時に使う
     言葉なんだ」って言われて。はあ〜!?

だからさ、そういう屁理屈ばっかり言ってね。そんなことを考えてるから、自分では作詞は全く
出来ないんだよ、ってことを自分で反省、大きな反省材料になってるの。

ユーミン)あと、追い打ちをかけるようで何なんですけど。松本 隆さん、私結構長い付き合い
     なんですけど。加山さんのアルバム「光進丸」の全部の詩を書いたのかな。それで
     船から陸を見ているような歌詞を提出したら、加山さんが、ここからここは、潮の流れ
     で行けないとか、順序が違うとかって。ゴロというのか

他人の親切、他人の功績をそうやってけなすというのが俺の一番悪いところだよ。

ユーミン)けなしてるわけじゃないけど、きっと気持ちが悪いんでしょうね、加山さんとしては
     正当性がないと。

そういうことは言わないでいいと思ったんだけど、でもねやっぱり歌の中で、順番に行ったら、
船で走ってる順番にしたいんだよね。

ユーミン)そうだと思います

だから、島の順番が全然違うとさ。

ユーミン)そりゃあそうですよね。そりゃあ、松本さんが悪い。

悪いとか良いとかの問題じゃなくて。そうした方が良いよね、って、言ったつもりが、やっぱり
伝説になっちゃうんだなあ。でも、本当に悪いと思った。一生懸命書いてもらったものをさ。
なんてことを言うんだって。言った瞬間にすぐ思うんだよ、俺。

ユーミン)あっ、ほんとに!?

だから俺は自分で作詞が出来ないんだ。理屈を考えていたら。

ユーミン)作詞をされたいと考えたことはあるんですか?

やむを得ずやったことはいっぱいあるんですね。「リオの若大将」で、リオデジャネイロのロケに
行って、監督が主題歌作ってあるだろうな?って言うから。そんなものはないよ、って言ったら。
作ってくれよって。俺作詞出来ないから曲を作ったってここで歌えないよって言ったら、ダメだよ
書けって。それで生まれたのが「ある日 渚に」っていう曲でさ。やむを得ず。

ユーミン)それ、聴いてみましょうか。・・・

ここまでの音源を期間限定で紹介します。

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 トーク1 その1

ユーミン)初期の頃の、岩谷時子さんが書かれてて。それは、加山さんについて取材とか、されるん
     ですか?

最初は訳詞なんだよね。俺、生意気にも英語で作詞を。易しい英語だけど、周りにアメリカン
スクールの連中が居たりもんだから。それでメロディー作って、歌にしてレコーディング
しちゃったわけだよね。で、映画の中でも歌ったんだけど。

ユーミン)ちなみに♪ふたりを〜♪は?

もっと前。「DEDICATED」という曲があってさ。”I Love You Yes I Do”。

ユーミン)♪I Love You Yes I Do♪という曲ですね

そう、自分でメロディー付けて。作詞作曲したじゃん!?それを「英語じゃダメ、日本語」って、
言うプロデューサーがいて、訳詞をしてもらいましょうと。たまたま、岩谷時子さんが東宝の
宣伝部にお見えになってた。紹介されて、頼んで。それが「恋は紅いバラ」という曲に変わる
わけだ。それが出会いだよ。

ユーミン)ちょっと聴いてみましょう。

○BGM(恋は紅いバラ)

ユーミン)発声が、やっぱりフランク・シナトラ的な

全く意識してないよ!?そんなの。

ユーミン)ほんとに!?何か日本人じゃない、喉の開き方がする気がするんですけど。50年前の
     作品を聴かれるとどう思います?

この程度だろうなと思ってる。はっははっははっは。音楽が大好きだから、音楽的に間違っちゃ
いないし。詩は、つまんないけど。まあ、そんなもんだろうって感じだね。

ユーミン)詩は、つまらない!?って。いや、詩、素晴らしいと思います。行間にたくさん、
     いろんなものが見えて

ユーミン)ところで、加山さん、おいくつになられたんですか?

俺?あと二か月ぐらいで、82(歳)!

ユーミン)しぇ〜!?よく言われると思いますけれども、とてもそんな風には、お見受け
     出来ませんね

ありがとうございます。なんででしょう!?

ユーミン)現役感を大切にされて?

まあ、それもあるねえ。

ユーミン)健康管理は、どんなところを一番重要視してらっしゃいますか?

健康だね。

ユーミン)健康管理は、”健康”!?あっ、それは”深い”です。私なんかも、時々後輩に、どう
     したら続けられるんですか、音楽?って言われて。それ、続けることですね、って。
     言うのと近い。禅問答みたいになっちゃうけど。健康でなければ、健康は追求出来ない
     ですよね

出来ない、その通り。その健康をどうすればいいか、今、情報はスゴいじゃん。それもあるけどね。
俺の場合は、親の代から健康というものを、ものすごい意識して。

ユーミン)お母さんがね。美容家で。

そうなんだよ、食事療法とか体操だとか、やってたけど。それが若くして癌で亡くなったから。
その時俺は自暴自棄になってね。もう、人間は何をやったって、死ぬ時は死ぬんだ。だから、俺は
食いたいもの食って、好きな事やって死んで行くんだみたいなこと、言ったんですよ。だけど、
60(歳)ぐらいになってから、やっぱりニンジンジュースが、いいみたいだなとか、話はお袋的に
なってった。夫婦二人してものすごい健康を管理するっていうか、健康志向になっていって。
何故か?っていうと、健康でないと、考えていて快適じゃない。快適じゃないということは、周り
の方に迷惑がかかる。発想の原点から明るくならない。これは一番大切なことだと思うので。
だから、それを維持するということは、本当に真から健康、肉体もそうだけど。精神的にも健康で
なきゃあ、いけないなあと。それを重要視する。それが一つのテーマですよね。

ユーミン)その話に通じるか、分からないんですけど、お目にかかったら一度聞こうと思って。
     加山さん、イケイケの時に急に事故に遭われたりとか、ローラーコースターみたいな
     人生を送られてるじゃないですか?あれは精神の健康を追及するから、つい足を踏み
     外しちゃったりされるんですか?

いや、それはそうじゃなくて、やっぱり自暴自棄というか、自分のやってることが、考え方が波が
ある。無謀だったとか、いろんなことがあると思いますね。まあ、今、考えたら、やっぱり自業
自得だ。何もかも自分でやってることだから、責任は最終的には自分にあるんだね。大きな間違い
だろうと、失敗だろうと。絶対、他人様のせいじゃないんだよね。そこに気がつかされる。気が
つくために自分がそういうこと、やってのけちゃってるんだよね。何だか知らないけど。で、反省
する。一生懸命になって、それを取り戻すっていうか、頑張る。それを何遍も繰り返していると、
ほんとにね、申し訳なになあって気持ちになっちゃうんだよね。

ユーミン)いやあ、それにしてもすごいなあと思うんですよね、その振幅が

まあ、確かにね。海と同じでね。凪があったら凪。そういう人生もあるでしょ。だけど、大時化
(おおしけ)の人生もあるんだよね。振幅がすごいっていうのは、大時化じゃない。俺なんて。
もうヤバイよね。津波クラスだよ。

ユーミン)まだまだお辛い話かもしれませんが、昨年ですか、光進丸が焼失したのは?

そうだね、去年の4月1日。

ユーミン)それも自業自得といったところに自決します?

というか、これは本当に、ある意味で助けられたと。すごい、船に感謝している。なぜ?感謝して
いるか。あんなにたくさんの幸せを与えてくれて、最小限度の被害で済んだということね。それと
地元の皆さんが、どれだけ協力してくれたか。僕は沖縄に居たもんだから、全然分からなかったん
だけど。原因を調べても全然分からないんですよ。老朽化だったと思うの。ただね、38年というと
人間で言うと110歳ぐらいの年齢になるわけ。だから、あっちこっちダメージがスゴくて、年中
修理、修理でね。いろんな意味で、自分が犠牲なって、あの世に行きますから、お世話になり
ましたって、去って行ったように思える。だから、ありがとねえ、ご苦労さんって言って見送って。
結局、沈んで良かった。沈まなかったら、ものスゴい高熱で、14キロリットルの燃料タンクが爆発
してたら、あの港、全滅ですよ。

ユーミン)ああ、そうなんだあ。

それを考えたら、漁師さんと保安庁と水上警察と、皆さんで、ホースで水をかけて沈めてくれた。
冷やしてくれた。それで助かったんだ。で、それを引き揚げなきゃあいけない。引き揚げて、
それを運んでいく船が来た。サルベージ船だよね。それが「こうしんまる」って言うんだよね。

ユーミン)ああ、そうなんですか!?偶然?

偶然。字は違うんだけど。”幸”(しあわせ)の”神”(かみ)の丸って書いて、”幸神丸”。
元々、そういう縁があったのかなと思うくらいね。

ユーミン)船って、擬人化しちゃうんですかね?よく、女の人の名前、付けるじゃないですか。
     海の神様が”ポセイドン”とか、男だから。”光進丸”は女性の名前?

船は女性なんだよ。”丸”って、付いてるのは、決して男の何々丸じゃなくて。お城の一部に、
”西の丸”っていうのが、あるじゃない。それの”丸”が、そのまんま船になって。

ユーミン)そうなんだあ!?

だから、お城の一部という感覚なんだよね。海も女性だしね。”ラ、メール”。

ユーミン)目に浮かぶようでしたね、今の救出作戦というか。

俺が14歳から船、造り始めて。

ユーミン)ご自分で設計されたんですもんね

一応ね、一般配置図という図面だけどね。専門的な、流体力学とか、プロペラピッチ計算とか、
トリム計算というのは本物の人たちがみんなやってくれたんだけど。まあ、それにしても、俺の
人生、一緒にず〜っと、歩いてきちゃったからねえ。67年間、共に歩んで。幸せを分かち合って。
大勢の人たちと楽しい時間を過ごす。それが突然無くなる意味っていうのは、何だろう?と。
やっぱり考えるねえ。

ユーミン)加山さんの人生の中で、一つのピリオドですよね?この先の人生で、一番達成したい
     こととか、或いは、こうなるだろうという予測とか、ありますか?

あのね、何か”役割”というものが、生まれてきた限りあるはずだなと思って。ユーミンみたく、
いい曲をたくさん書いて、人様がものスごく幸せになるじゃん!?ものスゴくいい曲だなあと
思って。それと似たようなことを僕もやらさせてもらってるわけだ。そうすると、その曲を聴いて
幸せに思ってもらえること、それが”俺の役割”かもしれないなと思って。で、そういう風に
頑張ろうって思ってるんですよ。で、ここで船が無くなったということは、船で遊んでる場合
じゃないぞ!お前には残り時間は少ないが世の中の役に立つことを、もうちょっと考えて、やれよ
って。神から言われたような気持ちになってる。

ユーミン)じゃあ、「光進丸」をおかけしましょう

ありがとうございます。

ここまでの音源を期間限定で紹介します。

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 トーク1 その2

2019年02月10日新設